工場レイアウト改善の手法
1.レイアウトを見直す
工場診断時によく見られることであるが、設備や組立て作業のレイアウトを、長年全く変えずに生産している工場がある。製造業を取り巻く環境はめまぐるしく変わり、これに伴い顧客ニーズも変化し多様化してゆく中で、工場レイアウトが変化しないのはムダの温床を放置しているようなものである。今のレイアウトは最適か、常に見直す必要がある。状況や製品の変化を敏感にとらえ、これに対応していくにはその原理原則を知るべきである。
工場レイアウト原則とは次のようなものである。
流れの原則
人や機械の配置が作業工程の順に並んでおり、よどみなく流れるように配置すること。これを検討するときは、作業の流れは何かを理解していないといけない。すなわち「流れ」として作業を考える基礎が必要となる。
スペース効率の原則
間延びしたレイアウトはスペースのムダだけではなく、製品や作業者の不要な移動を生むが、これらのムダは当たり前の仕事として定着していることが多い。この場合、できるだけ密度の高い配置をして、スペースの有効活用を計ること。人と人の間、機械と機械の間を短縮して、ぎっしりと詰まった生産レイアウトをつくりだすことである。
弾力性の原則
製品や生産量の変化に容易に対応できる配置でなければならない。戦艦ヤマトは図体のみ大きく、空中戦が主力となった世界の流れから取り残された巨艦であった。同じく図体の大きい恐竜が、地球の大きな季候変動に対応できず滅びた。すなわち変化対応力、身軽さ・機動力こそ生き残りの鍵である。
管理容易の原則
機械は段取り変更やメンテナンスをしなければならない。又、人がかかわる作業は安全でなければならない。これらへの配慮を怠ると、労働災害事故の原因となるばかりでなく、不良発生にもつながる。
2.改善事例 自動車部品メーカのレイアウト改善
ある自動車部品メーカのレイアウト変更のアドバイスを依頼された。作業は穴明け、ブッシュ打ち込み、カシメ、目視検査等の比較的単純な作業である。生産数量は大きく変動し、百個から数万個まで極めてばらつきがある。早速く現場を拝見すると、次ぎの問題点を見つけることができた。
- 機械を工程別にまとめて配置しており、各工程には多くの仕掛品が置いてある。完全なダンゴ生産となっているわけである。
- 工程が細分化され過ぎており、結果として工程間がアンバランスとなり、作業者の動きを見ても余裕のある工程と、忙しく作業しても消化できない工程がある。
- 工程間の距離が長く、又、一部順番が入り組んでいるため、多くの移動のムダが発生している。
この現状分析から次ぎの改善を実施した。
- 改善策1 : 工程別の設備配置をばらし、4 つの製品別ラインとし、これに対し人は生産の状況に応じてライン間を行き来できるようにした。
- 改善策2 : 細分化されていた工程の一部を連結し、同じ作業サイクルの中で2工程を行なうこととした。
- 改善策3 : 機械の間を短縮し、一部、ローラーコンベヤ(コロコン)で連結した。
- 改善策4 : 作業者は複数の工程を最小の移動で行なうようにした。
劇的効果
こうした改善により、当初1週間は生産が低下したが、その後、確実に出来高は向上し3ヵ月後には、実に26%以上の生産改善がもたらされた。「百考は一改善に過ぎず」である。